専務が私を追ってくる!
翌朝、この事故は全国区のニュースになったけれど、バスの乗客にけが人は出なかったため、大きく取り上げられることはなかった。
むしろ運転手の対応が良く惨事には至らなかったと、ポジティブな方向で報道された。
それにホッと安心したのも束の間、会社はとんでもないことになっている。
本社の門には報道陣が詰めかけ、1階のバスターミナルの窓口には問い合わせやキャンセル目的の人が殺到、4階の事務所では嵐のように電話が鳴る。
今日の夜行バスは出るのか。
安全に運行できるのか。
怖くなったのでキャンセルします、などなど。
顧客の不安はごもっともである。
役員が出ずっぱりの5階は比較的静かだが、秘書の4人は朝からアポのキャンセル対応やスケージュールの調節で、電話の受話器を上げっぱなしだ。
バス業務が滞ることがないよう、通常の業務も平行して行わなければならない。
電話をする中、事故について聞かれることも多い。
「まだ正式な報告が上がってきておりませんので、何ともお答えできません」
という胡散臭い回答しかできないのがもどかしい。
各部署、特に広告事業部からは大口の広告主からのクレームが相次いでいるという報告も上がってきている。
今回の事故は、東峰バスそして提携している湾岸バスの過失はほとんどない。
保険も適用されるため事故自体での損失はそれほどではない。
しかし、事故を受けてバスへの信頼が揺らいだことによる、二次的な損失は免れない。