専務が私を追ってくる!
朝出社してから夕方になるまで、私はトイレに行く時間さえまともに取ることができなかった。
ようやく受話器を下ろすことができた私は、少しでも休憩しようと、財布を持って4階にある自販機へ向かった。
エレベーターを待つより階段で降りる方が早い。
そう判断した私は、フラフラとエレベーター前を通過して階段へ。
すると下の階の方から男性社員の話し声が聞こえてきた。
「ほんと勘弁してほしいっすね。今日だけでキャンセル30件越えですよ」
私は思わず足を止め、姿が見えないよう隠れて息をひそめた。
前にもこんなことがあった気がする。
「しょうがねーよ。うちが悪くなくても、事故が発生するっていうイメージは払拭できないし、可能性は常にあるんだから」
そうなのだ。
数年前に国内で夜行バスの事故が相次いで以来、東峰バスでも安全に関するマニュアルの見直しは常に行われている。
実際、修も5月に、共同運行している湾岸バスとの見直し会議に参加している。
だけど、どんなにマニュアルを強化したって、どんなにドライバー研修を積んだって、事故が起きる可能性はゼロにはならない。
そして高速バスは、鉄道や飛行機に比べて、その危険性が高いのも事実である。