専務が私を追ってくる!
「お相手の女性、あなた、一度会ってるわよね?」
奥様が連れて来たけれど、社長室にいる間に修と入れ違ったあの時だ。
事故の起こる前日だった。
「ええ。たしか長部さんとおっしゃいましたか」
「そうそう。長部さんのところのお嬢さんの、由香ちゃんよ」
N市のアーケード街の自治会にも発言力があるという会社のご令嬢。
修と同じ30歳、独身。元彼女。
「綺麗な方でしたね」
私が褒めると、奥様はとても嬉しそうな顔をした。
「そうでしょう? 実は高校時代、修と付き合ってたらしいのよ」
……知ってます。
「そうなんですか」
「修が東京の大学に進学したものだから、卒業と同時に仕方なく別れたみたいでね。きっとお互いに未練があったのね。この間もあの二人、本当に良い雰囲気だったのよ」
「……え?」
今、この間って言った?
何それ? いつ? そんなの聞いてない。
奥様はまるで私を畳み掛けるように続ける。
「先週の事故があって、しばらくバタバタしていたでしょう? 修はS市の事務所にある宿直室に寝泊まりしてたんだけど、その間、由香ちゃんに修の身の周りの世話をお願いしてたのよ」