専務が私を追ってくる!

ドン、と体の内側に衝撃が走った気がした。

修が家に帰ってこない間、S市の事務所の宿直室で寝泊まりしていることは知っていた。

その場に、長部さんが来ていたなんて。

私聞いてない。

「ご飯とか、お洗濯とか。こういう大変なときは、ちゃんと栄養のあるものを食べなきゃ体を壊しちゃうものね。由香ちゃんのお料理、美味しいのよー」

奥様は楽しそうに話す。

よっぽど彼女を気に入っているのだろう。

『いや、ほら。母さんが親父のと一緒にやってくれてるから』

あの時修が目を逸らした理由が、今わかった。

本当は長部さんと一緒にいたから、やましい気持ちだったんだ。

口角を上げるための頬の筋肉が痛みだす。

笑顔を作るのが、だんだん辛くなってきた。

「それで奥様、私にお願いというのは?」

私の問いに、奥様は満面の笑みを浮かべる。

「あら、まだわからないかしら」

わざとらしい笑みが気持ち悪い。

専務室に女同士のドロドロした空気が立ち込めている。

私だって、バカではない。

途中で大体察していた。

ただ、自分から口にしたくないだけだ。

「うちの修と、別れてほしいのよ」

< 202 / 250 >

この作品をシェア

pagetop