専務が私を追ってくる!
ドン、と体の内側に衝撃が走った気がした。
修が家に帰ってこない間、S市の事務所の宿直室で寝泊まりしていることは知っていた。
その場に、長部さんが来ていたなんて。
私聞いてない。
「ご飯とか、お洗濯とか。こういう大変なときは、ちゃんと栄養のあるものを食べなきゃ体を壊しちゃうものね。由香ちゃんのお料理、美味しいのよー」
奥様は楽しそうに話す。
よっぽど彼女を気に入っているのだろう。
『いや、ほら。母さんが親父のと一緒にやってくれてるから』
あの時修が目を逸らした理由が、今わかった。
本当は長部さんと一緒にいたから、やましい気持ちだったんだ。
口角を上げるための頬の筋肉が痛みだす。
笑顔を作るのが、だんだん辛くなってきた。
「それで奥様、私にお願いというのは?」
私の問いに、奥様は満面の笑みを浮かべる。
「あら、まだわからないかしら」
わざとらしい笑みが気持ち悪い。
専務室に女同士のドロドロした空気が立ち込めている。
私だって、バカではない。
途中で大体察していた。
ただ、自分から口にしたくないだけだ。
「うちの修と、別れてほしいのよ」