専務が私を追ってくる!
「もう一度言うわ。あなたに意地悪をしたいわけじゃないの。私はただ、息子を守りたいだけ。そしてそのためには、あなたじゃダメなのよ」
私を嫌って別れさせたいわけでないことはわかった。
彼に大きなメリットのあるお嬢様と、是が非でも政略結婚させたいということも、よくわかった。
だが30歳にもなる息子を守りたいだなんて、子離れできていないにも程がある。
夜行バスの事故が起きて、修の業務がスムーズに行われていないのは事実だ。
事故の可能性が印象づいたせいでバス離れが起き、売り上げの下落は免れない。
だけど、修は強い。
それを自力で何とかできない男ではない。
一人息子が可愛いあまり、それがわかっていないのだろうか。
「守りたいって、どういう意味ですか」
何か、嫌な感じがする。
「もしかして、修さんに何か起こっているのですか?」
再び問うと、彼女の唇が震えだす。
目にはみるみる涙が溜まっていった。
「奥様?」
鬼の目にも涙、なんて思っては失礼だろうか。
私を追い込むつもりでここに来たくせに、ここで急にスイッチが切れてしまった様は、滑稽でもあるし不気味にも感じる。
「ねえ、お願い郡山さん。あなたが修と別れてくれさえすれば、修はきっと安全なの」
安全って、どういうこと?
「わけがわかりません。私にもわかるように話してください」
「お願いよ。修を守りたいの。お願い。お願いします!」
スッとカーペットに膝と手を着き、頭を下げる。
プライドの高い彼女が、私なんかにここまでするなんて。
それほどの危機が迫っているということなのか。
「奥様! 頭を上げてください」
「始まるの」
「何がですか」
「革命よ」