専務が私を追ってくる!
「でも、うちは今まで世襲制で上手くやってきたんですよね? 修さんは決して無能な人材ではありません」
「わかってるわよ。主人だって“修は俺より優秀な経営者になる”って喜んでる。だけど、会社に入ったばかりのあの子はまだ弱すぎる」
否定できない。
新入社員だし、役員にしては若すぎるし、就任してからの期間が短くて十分な信用も得られていない。
従業員からの嫉妬もあるし、そのせいで悪い噂を流されることもある。
「だから……長部さんの後ろ盾が必要だということですか」
奥様は私から目を逸らして俯いた。
県内有数の建設会社、長部建設は確かに強い。
N市への発言力も、かなりのものだろう。
身内になれば、まだ若造である修の強力な武器になる。
そういう意味で、確かに私ではダメだ。
「来週、緊急で臨時株主総会が開かれるわ」
「え?」
「もちろん今回の事故の説明と今後の経営方針の確認がメインだけど、今の不穏な雰囲気を利用して修の専務解任が提案される。これが賛成多数で議決されたら……」
修は会社を去らざるを得なくなり、世襲制は廃絶。
修の夢と希望は、叶わなくなってしまう。