専務が私を追ってくる!

「え?」

嘘でしょう?

あの優しい副社長が?

「北野さん、以前から世襲制に反対してたの。会社が大きくなったから、急に修に役員をやらせるのはリスクが高いからって」

縦にも大きいけれど、横にも大きい北野副社長。

25年前に経営破綻寸前だったこの会社を、現社長と共に救った英雄。

そして、大株主の一人でもある。

『彼のことは小さい頃から知っているし、困ったことがあったら相談してくれていいからね』

社員からの信頼も厚く、厳しいけれど優しくて、頼りになる。

社員にとっては、お父さんのような存在。

そんな彼が、修の解任を提案するの……?

『まあ、25年前よりマシだし、大丈夫だよ。僕が何とかする』

秘書の二人はいつも忙しそうで、とても愛想が悪かった。

あれはもしかして、修への敵対心だったのだろうか。

『じゃあ、君の彼にも頑張るよう伝えといてね』

この間のセリフは、冗談なんかじゃなかった。

彼なりの、際どい嫌味だったのだ。

もう誰を信用していいのかわからない。

「彼は会社のことを第一に考えてそう言ってるの。修に継がせたいというのは、雨宮家のワガママなのかもしれないわね……」



奥様が専務室を出て一時間後、社長秘書の園枝さんから臨時株主総会が開かれる旨の連絡メールが来た。

私は自分の役割を確認し、『承知しました』と返信をした後、修のアドレスにそのメールを転送。

状況をわかっているのかいないのか、『了解』と返信をよこした彼からのメールには、ふざけた顔文字が添えられていた。



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