専務が私を追ってくる!

真夏の夜、エアコンの効いていない玄関。

汗で湿った彼の首元。

嗅ぎ慣れないボディソープの残り香。

彼の抱擁をこんなに不快に感じたことはなかった。

「放して」

「嫌だ」

「放してよ」

「放したら逃げるだろ」

力一杯もがいてみても、修の腕は私の体に強く食い込んで離れない。

嘘をつかれていたことや力で敵わないことが悔しくて涙が出る。

会えて嬉しい、帰ってきてくれて嬉しいだなんて、素直に思えない。

「美穂。話聞いて」

「聞きたくない。修くん、嘘ばっかり言うじゃん」

「それはごめん。余計な心配かけたくなかったんだ。今日はちゃんと本当のことを話すよ」

「それでも聞きたくない!」

喚きながら再び体を思いきり捩る。

修の腕が少し緩くなった。

今度は手応えがあったのかと思ったら、修はいつかのように手早く私の体を浮かせ、腰と膝を折り、靴を履いた足だけ土間に下ろしたままフローリングに私を押し倒した。

驚く間もなく唇と言葉を奪われる。

「んーーーー!」

逃れるためにフローリングの上で動くと体が痛い。

修は構わずキスを続ける。

抵抗する気力がだんだんなくなっていき、力を緩めたところで、修の唇がゆっくり惜しむように離れていった。

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