専務が私を追ってくる!
数秒間無言で見つめ合い、何かを確かめるように何度かチュッと口づける。
直射する玄関の証明が眩しい。
「長部さんともキスしたの?」
私が聞くと、修は表情を変えずに答えた。
「したよ」
一気に涙が溢れ、こめかみに流れていく。
「長部さんともエッチしたの?」
「したよ」
私は堪えきれず、喉をしゃくりあげながら嗚咽を漏らした。
涙はこめかみから頭の方へ染み込んで行方がわからなくなる。
惨めな私の泣き顔を見て、修は優しく微笑んだ。
他の女と寝ておいて、どうしてそんな顔ができるのだろう。
私以上の極悪人。
修に体を起こされると一気に腹が立ってきて、引っ叩きたくなった。
グッと右手を振りかぶったタイミングで、修は静かに付け加える。
「12年以上前にね」
「え……?」
「高校時代、付き合っていた頃の話だよ」
拳を解き、腕を下ろす。
「じゃあ、今日は?」
「してないよ。飯食っただけ」
「S市から帰ってこられなかった時は?」
「してないよ。洗濯してもらって、あと弁当もらっただけ」
「結婚は……?」
「するわけないだろ。俺は美穂が好きなんだから」