専務が私を追ってくる!
午前8時半、出社。
バスターミナルになっている本社1階でバスを降りて、軽快にヒールを鳴らして歩き出す。
会社のエレベーターに乗って5階のボタンを押すと、私が誰なのかわかっていない4階の従業員たちが怪訝の顔をした。
部外者だと思われないよう、これ見よがしに社員証を首にかける。
今日は4階にある更衣室へは寄らず、直接5階へ。
エレベーターを降りて廊下を歩いていると、副社長室の扉が開いた。
中から3人、北野副社長と専属秘書の二人がそろってお出ましだ。
ビクビクしても仕方がない。
私から声をかけた。
「おはようございます」
すると彼らは首を傾げてしまった。
外見の違いから、すぐには私であるとわからなかったようだ。
かなり近づいてからやっと私だと気付き、目を丸くした。
「あ、おはようございます」
驚きつつ、やっぱり無愛想な山田さんと水野さん。
北野副社長だけは、笑顔を向けてくる。
「おはよう。驚いた。郡山さんだよね」
彼こそが、今日最大の敵である。
「はい」
「どうしたの。すっかりキレイになっちゃって」
「ありがとうございます。本日の総会では、専務にとってとても重要な決定があるそうなので、ほんの少し気合いを入れてみました」