専務が私を追ってくる!

普段の業務をこなし、大会議室で臨時株主総会の準備を整え、一段落した頃には午後2時を回っていた。

総会は午後3時からだ。

少し休んだらすぐに株主の出迎えと受付の時間になる。

私は戦いに備えて、メイクをしっかり直す。

最後にリップグロスを塗ったところで、扉から柔らかいノック音が専務室に響いた。

「どうぞ」

仕上げに上下の唇を合わせ、来客を迎えるために立ち上がる。

扉が開き現れた人物に、私は目を見開いて驚いた。

「失礼します。こんにちは」

「長部さん!」

修の高校時代の彼女で、先日縁談が破談になった、県内有数の建設会社のご令嬢である。

彼女もまた、私の変化に驚いているようだ。

「お久しぶりです、郡山さん。なんだか雰囲気が変わりましたね。別人みたい」

それにしても、なぜこの人がここに。

崖っぷちの修に結婚をを迫るつもりなのだろうか。

だって、今ならまだ間に合う。

「お久しぶりです。あの、専務の雨宮は現在外出しております。もうしばらくしたら戻るはずですが、その後は株主総会で……」

どうしよう、私、ビビってる。

本当なら「修は私を選んだのよ、ふふん」と勝ち誇った顔を見せてやりたかったのだが、総会前の緊張もあって、そんな余裕が持てない。

きっちり秘書としての役割を果たす私の姿を見て、長部さんが笑った。

「修のことなんかどうでもいいんです。今日はあなたに謝りに来たの」

「え……?」

< 231 / 250 >

この作品をシェア

pagetop