専務が私を追ってくる!
「えー。彼女は専務秘書の郡山です」
社長の紹介によって、私は完全に引っ込みがつかなくなった。
ヒールをリズミカルに鳴らして前方へ出るが、怖くて膝が笑っている。
でも、私が何とかしなくちゃ。
“誰かを守る”なんて口では簡単に言えるのに、今まで生きてきて自分以外を守ったことがなかったから、こんなに怖いなんて知らなかった。
「専務の雨宮が遅れておりまして、大変申し訳ありません。専務が担当している事業についての質問は、彼の到着まで、秘書である私が代理で全てお答えします」
修の夢と仕事の全てが詰まった「おさむ帳」は、今でも定期的に見せてもらっている。
全てを暗記しているわけではないけれど、株主の質問に答えられる程度には理解している自信がある。
S銀行の頭取は何か言おうとしたが、北野副社長に目配せをして、結局口をつぐんだ。
「株主の皆様のご不安、ご心配はお察しいたします。ご覧の通り、専務の雨宮も秘書である私もまだまだ若く、未熟でございます。しかし彼は、弊社および株主の皆様の10年先、20年先……いいえ、50年先の利益をお約束するため、確かなヴィジョンを持って、粉骨砕身しております」
それは今だって、きっと。