専務が私を追ってくる!
真夏の廊下。
当然エアコンなど効いていない。
汗だくだった彼のシャツは湿っていて、首筋にも汗が光っている。
それでも私は構わず、彼の首に腕を回し、しっかり彼にしがみついた。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
すぐに彼の腕が私の腰に巻き付いて、ギュッと締め付けられる。
「捕まえた」
修は冗談めかしてそう言って、ますます強く私を抱きしめた。
「うん。捕まっちゃった」
捕まったという表現が妙にしっくりくるのはなぜだろう。
逃げて、避けて、拗ねて、それでも気付くと彼がそばにいて。
出会ってから今までのことを思い出すと、修にはずっと追われていたような気がする。
暑さに負けて体を離し、ふと視線を感じた方に顔を向けた。
すると、微妙に開いた会議室の扉から覗く二人の男性が。
「げっ! 親父!」
「副社長!」
二人は何とも言えないニヤリ顔で私たちを見つめている。
「修、こんなところでプロポーズかぁ?」
「違うし! 気が早いし! 見んな!」
「お手洗いに行きたい株主さまがいらっしゃるんだけど、そろそろお通ししてもいいかなぁ?」
「ど、どうぞ。私、ご案内します!」
「いやぁ。若いっていいねぇ、北野くん」
「いいですねぇ、社長」
私と修は恥ずかしさに染まった顔を見合わせ、それを上回る幸福感と照れを隠しきれずに声を上げて笑った。