秋色紫陽花
「ああ、コッチ向きの風だな、でも雨がガラスを掃除してくれそうだからいいよ」
振り向いた彼の斜め下、窓の端っこに置いてある素焼きの鉢には枯れた紫陽花。濃いピンク色がほどよく掠れて緑色から茶色を帯びた花の色が、意外と部屋の白い壁に馴染んでいる。
「中途半端に汚れが残ったら悲しくない?」
「その時は仕方ない」
全然気にしてない風に、彼は弾むような声。よいしょ、と腰を下ろした。
ローテーブルの上のグラスへと手を伸ばす彼の向こうに枯れた紫陽花。枯れてしまった花のどこがいいのかと思っていたけど、なんだか絵になってるから不思議。
グラスに彼の唇が触れた向こう側に紫陽花が滲んでる。アイスコーヒーが彼の喉を通り過ぎていくのを、知らず知らず見送ってしまっていた。
「どうした?」
と彼に問い掛けられて、ようやく我に返る。私としたことが不覚だ……、恥ずかしい。
「あ、雨止まないかなあ……と思って」
テキトーに返したのに真に受けて、彼が窓を振り返る。首を伸ばして空を見上げる背中が、あまりにも熱心で笑える。
「止むわけないだろ、台風はこれからなのに……」
と言う彼の返事を待たずに寝転がった。こっそりと逃げるように。