神様修行はじめます! 其の四

フッと視界が薄暗くなる。


ウツボの影。いつの間にか、身動きできないあたし達のすぐ近くまで来ていた。


ヤバイ! 襲われる!


熱と恐怖のせいで汗が噴き出す。でも、どうにもできなかった。


かすむ両目で、徐々に近づいて来る敵の姿を見上げるしかない。


ウツボが巨大な口を開けて、接近しながら攻撃の態勢をとったのが見えた。


ああ・・・・・・来る!


身を固くしてギュッと目を閉じた瞬間・・・


―― ビキビキビキ・・・!


何かが軋む、大きな音が聞こえた。


同時に空気の温度が、刺すようにギリリと一気に低下する。


すると接近していた影の動きが、ピタリと止まった。


あたしは零下の風にさらされながら、薄目を開けて状況を確認する。


なにが・・・起こった・・・?


目の前のウツボは、巨大な分厚い氷の中に閉じ込められていた。


呆気にとられて見上げるそれは、さながら氷のモニュメント。


鮮やかな青色が透明な氷の艶に包み込まれ、キラキラ輝いている。


まるで芸術的な慰霊碑のようだった。


すげえ・・・こう言っちゃ身も蓋も無いけど、あんたすごく綺麗だよ、ウツボ。


浄火が「うひょお」と感嘆しながら、氷をコンコンと叩いている。


その横を門川君が砂を踏みしめ、悠々と近づいてきた。


「さても、未知なる異形は面倒だな」


ぜんっぜん面倒とも何とも思って無さそうな、まったく平然とした表情で彼はそう言った。

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