神様修行はじめます! 其の四
ガタガタ震えながら、細く息を吐いているあたしの耳に絹糸の弱々しい声が聞こえてきた。
「小娘・・・」
息が苦しくて声が出ないから、返事もできない。
代わりに、ほんの少しだけ身じろぎした。
それだけでグラッと視界が回転して、込み上げる吐き気に悶絶する。
は、吐く! 吐くうぅぅ・・・!
「小娘、信子の命を、断て」
「・・・・・・!」
一瞬、吐き気を忘れた。
そしてこれまでとは違う種類の動悸が、激しく胸を打ち鳴らす。
「支配している信子が死ねば、異形は攻撃を止めてこの場から退くやも知れぬ」
耳元にドクドク脈打つ音が響く。
あたしは信子長老を見た。
倒れた彼女の顔色は、色を塗ったように薄青く変色している。
それは血の通った人間とは思えないほどで、死にかけているのは明白だった。
この人の命を、断つ。この人を殺す。
それは・・・。
それは、言わずと知れたこと。その考えは、あたしの頭にもあった。
恐らく絹糸や門川君なら、当然それを行うだろう。
胸の中にたくさんの感情を押し殺しても、やり遂げるだろう。
なぜなら、それをすべきだから。
でも、でも、それは・・・・・・!
あたしは目をつむり、砂をギュッと握りしめる。
それは迷いの現れ。絹糸の言葉に、うなづく事はできなかった。
あぁ、この期に及んで、これほど甘い愚か者。
自分の覚悟の足りなさと未熟さを、あたしは心底呪った。