神様修行はじめます! 其の四
仰向けに倒れている子独楽ちゃんの白い手が、ピクリと動いた。
細い指先が、頼りなく砂を掻く。
母親によく似た大きな目が、フラフラとさまよった。
焦点の合わない瞳は、おそらくもう、ほとんど何も見えていないんだろう。
それでもその目は、指先は、何かを懸命に探していた。
「お・・・か・・・」
可憐な唇が、必死に求めるものの名を呼ぶ。
「ど、こ? お、か・・・さ・・・」
黒い目に泉のように涙が盛り上がり、こめかみに流れる。
絶え間なくあふれる透明な涙が、次々と耳元へ落ちていった。
「お願・・・捨てない・・・で・・・」
涙に震える、鈴のような声。
何も見つけられぬ目が、哀しく歪む。
何も探せぬ手が、虚しく砂をつかむ。
「お か あ さ・・・」
無心に母を呼ぶ小さな声が、途切れた。
大きな目が力尽き、ゆっくりと閉じられる。
白い指の動きも・・・止まった。
・・・・・・・・・・・・。
子独楽ちゃんの記憶は・・・
人間としての記憶は、あの時から止まったまま。
父親に、異形の水を無理やり流し込まれて死にかけた、あの時から。
父親に
『お前は母親に見捨てられるのだ』
『お前は、ゴミ』
そう耳元にささやかれて気を失った、あの時から。