社内恋愛なんて
名言のような言葉を吐いて、瀬戸内さんは大きな口を開けてパスタを頬張った。


 本音を言うと、瀬戸内さんのことを少し恐れていた。


はっきり言うし、それがまた図星で痛いところをつくから、傷付くこともある。


仕事を頑張ってくれていて、いい人だなとは思うけれど、一方で世渡り上手なところもあって心の中では何を考えているか分からないところもあった。


だから、仲良くなるのが怖かった。


 守と美奈子との一件は、男性不信だけでなく女性も含めた人間不信に至らせていた。


うかがって、うかがって、うかがって……。


どこまでうたがえば安心できるのか分からなくなって、結局うわべだけの関係で終わってしまう。


 昔からの友達はいるけれど、新しい友達を作ることに臆病になっていた。


でも、このままじゃいけないなって、瀬戸内さんと話していて痛感した。


私はあまりにも自分の殻に閉じこもりすぎているのかもしれない。


卑屈になりすぎているのかもしれない。


そのことに気付かせてくれた瀬戸内さんに感謝しよう。
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