社内恋愛なんて
訝(いぶか)るように見つめる瞳に、胸がドキドキしてきた。


伝えたいことがあると言ったけど、どう切り出せばいいのだろう。


途端に緊張してきて、部長の目がまともに見れなかった。


「えと……あの……」


 必死で言葉を探すも、見つからない。


なんて言えばいいんだろう。


緊張だけが高まって、頭が真っ白になっていく。


「どうした?」


 私の様子に部長は不審がっていた。


早く言わなきゃと思うけれど、思えば思うほど言葉が出てこない。


「……俺と、付き合う気になってくれたのか?」


 ズバリの台詞に、驚いて顔を上げた。


どうして分かったのかと目を見開いていると、部長はくしゃっとした笑顔を見せた。


「なんてな」


 少し自嘲気味に笑っていた。


冗談、だったの? 


なぜか緊張して言い出せずにいる私の緊張をなくすために……。
< 204 / 359 >

この作品をシェア

pagetop