社内恋愛なんて
喧嘩をふっかけるような棘のある物言いだった。


部長が振り向いて、守の目を見つめる。


不穏な空気にいたたまれない気持ちになる。


「いちゃついていたわけではない」


 はっきりと否定した誠一郎さんに、守は睨みつけながらなおも言い放つ。


「早くから出世した人は、平気で保身の嘘をつくんですね。

肩を抱いて出てきてるの見てるんすよ。

でも、まあ、俺がとやかく言ったところで人事部長の権力で揉み消されちゃいますかね」


 守の言葉は、ネットの中傷と繋がるところがあってドキリとした。


まさか、あれは守が書いたの?


「勘違いしているようだが、人事部長だからこそ普段の行いは厳しく見られている。

そもそも俺にはそんな権力はない。

嫉妬するのは勝手だが、こういう言い方は男らしくない」


 ぐうの音も出ないほどはっきりと言われ、守は唇を固く結び押し黙った。


悔しそうな顔がにじみ出ている。


でも、男らしくないと言われたのが堪えたのか、反論してくる様子はなかった。


 誠一郎さんが再び歩き出したので、慌てて私もその後を追う。


毅然とした態度で守と対峙した姿が、とても頼もしく感じた。


誠一郎さんの大きな背中を追いかけながら、自然と頬が緩んでしまう自分がいた。

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