いと。
「な…っ、なんでここにいるの!?」
まさかこんなところで会うなんて………
いや、違う。
そんなわけない。
偶然じゃない。
「………調べた?それともまたずっと貼り付けてたの?」
「…………同じことだ。そうだろ?」
「……………。」
あぁ、そうだ。この人はいつもこうやって私を冷たく見下げる人だった。
グレーのスーツ、ピシッと分けた髪、眉間にシワを寄せ、まるで私を汚いものでも見るように目を細めて薄く眺める。
そう。ずっとこの視線を向けられてきたんだ。
「……アイちゃん?知り合い?」
その声を聞いてここが彼の店だと気づく。
…っ!そうだ、薫さんは…!
「……『アイ』?お前はまた自分のオトコにそう呼ばせてるのか、呆れたやつだな。
………君。
こいつが本当は誰か、知らないのか。
………本当の名前も。」
「やめて!」
制止するように会話を遮ろうとした私に構わず、無情に父は口を開く。
「…ふっ。哀れだな。所詮君も『愛しい人』ではないと言うことだ。」
「…………っ!」
……っ!ダメだ。
ここは薫さんの大事なお店だ。
「ごめんなさい。帰ります。」
そう言うと代金をカウンターに置き、父を引っ張るように一緒に店を出た。
「アイちゃん!?」
薫さんの声が聞こえたけれど、とても振り返る気にはなれなかった。