いと。
いつも冷静で無表情な戸澤があんな風に感情を出すなんて。
あれは確かに………惚れた女を思いやるひとりの男の顔だった。
「……………い、と…。」
『あんなに苦しい想いをして、あんなに泣いて、ボロボロになって…!』
聞こえたセリフが胸を抉る。
きっと……立ち上がれないほどの痛みを抱えたんだろう。
体調だって崩しているかもしれない。
でも俺は………
それを抱きしめて癒してやることも、そばで見守ってやることも、できないんだ。
その資格を…もう…失ってしまったんだ。
きっと永遠に。
残された右手のペアリングが寂しく光る。
「取り戻すつもりだったのにな。」
あまりの情けなさに涙も出ない。
ただ自分の愚かさを悔いて、拳を握るだけだった。
「……愛………愛………!」
もう、そう呼ぶことさえ、許されない。