いと。
「くそー!どこいった…。」
心当たりもなく繁華街を駆け抜ける。
そんなに遠くへは行っていないはず……
「…っ!あいつ!」
視界の先には今まさに黒塗りの車に乗り込もうとするさっきの男がいた。
反射的に駆け寄ると向こうも俺に気づき、開いたドアに手を掛けてこちらを向いた。
「はぁ……。アイちゃんはどこに?」
そう言った俺にそいつは歪んだ薄ら笑いを浮かべ、こう返した。
「くっくっく。だからあいつはアイちゃんなんかじゃないって言っただろう。
あいつはな……」
「あなたからその先を聞くつもりはない。彼女はどこだ?全ては彼女に聞く。」
冷たい視線を向けるとそいつは一瞬肩を竦め、
「そうか。あいつの行く先など知らん。興味ない。」
そう言って車に乗り込んだ。
そして窓を開け、バカにするような嫌な視線を向けて
「自己紹介だけしておこう。私は眞城総一郎。ましろ株式会社の社長であいつの…父親だ。戸籍上のな。
よろしくたのむよ、多久島薫くん。」
そう一方的に告げ、運転手に合図をして優雅に去って行った。