いと。
「はぁ、はぁ…!っ…。こんなに走ったの何年ぶりだよ。」
その間にも雨脚はどんどん強まる。
雨に濡れてひとり寂しい思いをしてるのかと思うと…どうしようもなく、胸が疼いた。
「………っ!いた!」
駅が目前に迫った道の端を、雨に濡れながら歩く後ろ姿。
肩を落とし、髪からしたたり落ちる滴を気にもとめない様子は酷く寂しく見えた。
思わず駆け寄り、声をかける。
「アイちゃん!」
「……っ!」
彼女が息を飲むのがわかる。
足取りは止まり、濡れた拳を握りしめて何かに耐えているようだった。
「………アイちゃん。」
「……聞いたんですよね。私は……アイちゃんじゃないです。」
背後に立つ俺に、彼女は振り向かずにそう答えた。
弱々しく、震えた声。
それはひどく切なく…苦しく響き、俺を突き動かした。