いと。

「あの、ありがとうございました。」

「あぁ、あったまった?」

部屋着に着替えた薫さんはキッチンからこちらに笑顔を向けてくれた。

「はい。薫さんも入って下さい。

…すみませんでした。私より濡れてたのに。」

「俺は丈夫だから全然平気。はい。」

リビングのテーブルにコトリとマグが置かれる。湯気がほわりと漂うそれからはふわりと、スパイスとワインの香りがした。

「ホットワイン。これ飲んで待ってて?」

「…え?」

「俺がシャワー浴びてる間に帰るつもりだった?」

そう言いながら頬に触れてくる手は冷たい。
きっと冷えた身体で…それでも私のことを優先してくれたのだろう。

「もしそうだって言うなら……このまま襲っちゃうよ?」

「なっ!?」

冗談目かしてそう言うけれど、その顔は半分甘く、…半分真剣だ。

きっとちゃんと、私の話を聞いてくれるつもりなのだろう。

「……………」

無意識にその手に自分の手を重ね、覚悟を決めて心を落ち着ける。

「……わかりました。そのつもりでしたけど、待ってます。だから、ちゃんと温まって下さいね。」

静かにそう伝えると彼は、ひとつ触れるだけの淡いキスを落とし、微笑んでバスルームに向かった。


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