いと。
「……………亨?なんでいるんだよ。」
電話は昨日もしたけれど、前回会ったのはいつだっただろうか。
オレより6つも年上のその風貌は、貫禄こそないものの間も無く30代になるせいかいくらか精悍になった気がした。
呆気にとられるオレに対してその兄は冷静だった。
「お前、呼び捨てにするな。いつも言ってるだろ。」
視線は鋭く父に向けながらも、口調は俺に向けられて穏やかだ。
「………亨。ちょうどよかった。曜のやつが辞表なんぞ出してきてな。
お前も言ってやってくれ。
お前にはそんな道はないって。」
オレを思い通りにすることしか考えていない父は兄が向ける視線に気づかない。
だけど………
「……曜、頑張ったな。もう我慢する必要はない。」
父の言葉を無視してくるりと振り向いた兄はそう笑った。
その表情は自信に満ちていて…オレたちが陰でしてきたことが、ようやく実を結んだことを表していた。