いと。
部屋を出てリビングへ入ると、タイミング悪く父と鉢合わせた。
兄や祖父にやり込められた父は引退してからすっかり引きこもり、日がな一日ボーッとするようになっていた。
「………曜。まだあの娘を探しているのか。」
響く声にはもう以前のような嫌味な覇気が感じられない。
「………当たり前だろ。あいつはオレの女だ。」
「……………。」
「父さんだって父親なんだろ?気にならないのかよ。自分の娘なのに。」
「……………。」
父からの返事はない。
それはオレを、言いようがないくらい激しくイラつかせた。
「なんとか言えよ!だいたい自分がしたことわかってんのか?!何の責任もとらずにのうのうと…!恥ずかしくないのかよ!」
「……………。」
黙ってオレを見つめたままの父の口元が動くことはなかった。
「…もういい。」
踵を返し、ドアノブに手をかけた時だった。
「…ふっ、………っくっくっくっ……。」
嘲笑うような薄ら笑い声が背後から聞こえ、思わず体が固まってしまう。
「眞城はどうして、詳しく調べなかったのかなぁ…。
そうすれば今頃は………。
…バカだよなぁ……。」
振り向いた先のソファに座る父の目はもうオレではなくどこか遠くを見ていた。
「…どういう、ことだよ。」
調べる?…誰を?…何を?
静かに目を閉じた父はどこか物悲しい表情をしていた。
「………曜。昔話を聞かせてやろう。
そうだなぁ、…学生の頃からの話だ。」