いと。
ー シンジョウ メグミ ー
それが、私がここで名乗っている名前だ。
幸いなことに、桐子さん以外が目にするところに、漢字の読み方までは書いていない。
曜に別れを告げてからあてもなく電車を乗り継ぎ、気づいたら……ここの湖のそばに書いてあった昔話に釘付けになっていた。
そのまま砂浜に腰掛け、日が暮れるまで湖面を眺めていた。
桐子さんはそんな私に声をかけ、空き部屋があると自身の旅館に泊めてくれたのだ。
翌日、立ち去ろうとした私に
『ねぇ、ここで働かないかしら。』
そう声をかけ寮と仕事もくれた。
本名は名乗りたくないという我儘も、事情があるなら好きにしたらいいと言ってくれた。
その言葉に甘え、ひと月以上。
感謝しても…しきれない。