いと。
「………?」
何かの気配に、足取りが止まる。
………呼ばれた?まさか…ね。
「わ。本格的に降ってきた。早く帰んなきゃ。桐子さんの言う通りだったな。」
はらはらと降る程度だった雪はいつの間にかその量を増し、フードを被って足早に歩き出す。
今朝出がけに桐子さんに、『そろそろ本格的に降るわね』と言われたのを思い出して傘も持たずに出たことを後悔した。
「………!」
「…え?」
信号を渡ったところでふと、『なにか』に気づきまた足が止まる。
「…愛!」
「…っ!」
確かに聞こえたその声に無条件に振り向くと、
そこにいたのは…、
「………よ……ぅ。なんで……?」
触れてはいけない、誰より…愛しいひと。
「愛!」
車の往来に行く手を阻まれている彼を見て咄嗟に逃げようと駆け出す。
「…っ!…はぁ、はぁ…っ!」
曲がり角を曲がり必死に走っていると後ろから聞こえてくる曜の足音がどんどん近づいてきた。