いと。
「…っ!くそ!」
逃げるように走り去った彼女を必死で追う。
絶対…逃がさない。
もう少しで手が届く。
その時だった。
ー バシャリ ー
持っていたカバンを落とした愛が焦ったようにしゃがんで雪の上に落ちた物たちをかき集め始めた。
「……はぁ。………愛。」
その姿の前で足を止め、静かに名前を呼ぶ。
ピクリと一瞬止まったその手は、その先にある雪で濡れたハンカチをゆっくりと拾った。
「……………。」
俯いたまま立ち上がった彼女にそっと手を伸ばす。焦がれるほど求めた影に触れるのは、ちょっと震えてしまうほど緊張した。
「………顔、見せろよ。」
その頬に手を添え、上を向かせてそっと視線を合わせる。
切なそうに歪むその瞳には溢れそうなくらい雫が滲んでいて、それを見た途端迷いなく腕を引き………
そのままぎゅっと、細い身体を抱きしめた。