いと。

「………愛。…………愛。」

私の名前を響かせる声は、これまでのどれよりも切なそうだった。


耳に届く鼓動。


鼻に届く甘くて少しスパイシーな香り。


きつく抱きしめる腕の強さとしなやかさ。


私が求めている物が全部…そこにあった。


でも…ダメだ。


「………曜。ごめん…ね。」

一瞬、抱きしめていた腕が緩んだ隙をつき渾身の力で突き飛ばして逃げる。

「…っ!…愛!」

呼ぶ声ははっきり聞こえたけれど…振り返らずに細い路地を縫うように走った。


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