いと。
その後寮に様子を見に来た時にはめぐちゃんの姿はなかった。
カバンも財布も置きっぱなしで…ただ、母子手帳だけがなくなっていた。
彼女を探して…見つけたのは、最初に声をかけた湖だった。
母子手帳が砂浜に投げるように置かれていて……めぐちゃんの姿はそのずっと先。
腰まで水に浸かりながらさらに先へと進んでいた。
「めぐちゃん!……ダメ!めぐちゃん!」
慌てて後を追って必死になって…渾身の力で水からあげた。
「…っ!はぁ、はぁ、はぁ……っ!
バカ!何考えてるの!?あなたの人生がどうだとしても!子供は犠牲にしちゃダメ!」
「………っ!桐子…さ………ん。」
砂を握りしめて何かに耐える彼女からは、ポロポロと涙が溢れていた。
「でも…、でもね。この子供は、産んではいけないんです。
私が愛した人は…弟だった。
人として結ばれてはいけない相手です。
だから子供も産んではいけない。
それなら…自分も一緒に………。」
まさかそんなことが本当にあるのかと思うほど、あまりに苦しい悲しい理由。
とにかく連れ帰って温かいお風呂に入れて落ち着いた頃、めぐちゃんは少しずつあったことを話してくれた。
本当の名前やこれまでにあった苦しい悲しい出来事…。
乗り越えて幸せにと思った途端に全てをなくしたと。
「愛してる人の子供は嬉しい。…でも、私たちの関係ではそれは許されることじゃない……。
私のように産まれながら罪を背負っているような人間にはしたくない…。
かわいそうすぎる……。」
そう言いながら抱きしめるようにお腹を抱える姿は、もう既に立派な母親だったと思う。
「……父親が誰かなんて分からないわ。一緒に命を絶ってあげるくらいの覚悟があるならそれは育てることに使いなさい。
子供には罪なんかない。ましてや愛し合った両親の子供。
私も協力するから、立派に育てなさい。」
それから彼女には負担の少ない事務職に移ってもらい、体調第一で働いてもらっている。