いと。
「…………愛。」
すぐ後ろから聞こえた声は低く鋭く胸を突いてきた。
冷たく響く風の音と、しかもフードを被っていたことで曜の足音はかき消されてしまっていて、こちらに向かって歩いてきているなんて全く気づけなかった。
………どうしよう。
振り返らなくても分かる。もう私たちの距離は無いに等しい。
「………っ!」
ふわりと、でも確かに強くその腕に包まれる。
後ろから伸びてきた愛しいひとの腕。
「愛…。寒いから一緒に帰るぞ。身体、冷やしちゃダメだろ。」
労わりの言葉が至近距離で耳にかかると、心では離れないとといけないとわかっているのに身体は……言うことを聞かず動いてくれなかった。
「…………曜…………。
でも、一緒にはいられないよ……。
曜だってもう聞いたでしょ?私たちは…」
「聞いたよ。…ショックだった。
でも…違ったんだ。」
「………え?」
抱きしめられたまま顔を上げると、曜はそっと私の身体を自分の方に向けて笑った。
何が違うというのか。曜が何を言いたいのかよくわからくて…答えを求めてただじっと、メガネの奥の切れ長の瞳を見つめた。
「愛がいなくなってから1カ月も経ってから白状したんだ。…クソ親父が。
全てはお前のお父さんに嫉妬しての偽装で実際には何もなかったって。」
「……え?…偽装って…何それ。どういうこと?」