いと。
「…なぁ、愛。」
髪に顔を埋め、耳元で私の名前を囁く曜の声はなんだか切なく寂しげに響いて不安の雲が心に掛かる。
「………何?どうしたの?」
指を絡ませた手は離さないとばかりにしっかりと握られていて、それが余計に風のように雲を煽ってしまう。
「…………………。」
「曜?」
空いている手を彼の頬にそっと寄せると、
「……………行くなよ。」
聞こえたのは、曜らしくない気弱なセリフだった。
「え?」
「………もうどこにも行くなよ。
もう…オレから離れるな。
ずっと、隣で笑っててくれ。…な、愛。」
「…っ!」
消えてしまいそうなくらいの小さな声は、少し震えていたかもしれない。
握られた手も…震えていたかもしれない。
恥ずかしいけれど…その時初めて私は、曜の苦しみや辛さを知った。
…そうだ。そうだよ。
曜にだって、苦しい思いをさせたんだ。
短かったけれど…あんなに真剣に大切にしてくれた日々。
伝えてくれたまっすぐな想い。
理由があったとはいえ、私はそれを捨てたんだから。
「…曜………。ごめん、ごめんね。」
彼の頭を胸に抱えるように引き寄せ、強く抱きしめる。
「もう、どこにもいかないよ。約束する。
ずっと曜のそばにいる。
私が…曜を幸せにする。
たくさんたくさん、探してくれてありがとう。」
「……い…と。………愛………っ。」
まるで縋るように背中に回されてくる腕がぎゅっと私を包む。
いつもの逞しさや自信たっぷりの表情からは想像もできない、幼くすら思えるその姿や仕草。
それはどうしようもなく私の心を突き動かして、どうしようもなく…焦がれるように愛しさが溢れた。
「曜、愛してるよ。…愛してる。
私の………たったひとり、愛しい人。」
少しだけ距離を取り、切ない表情を浮かべる頬を両手で包み想いを全て注ぐかのようにその愛しくてたまらない少し薄い唇に私の唇を重ねる。
そのままお互いの温もりと心を確かめ合うように抱き合ったまま、私たちは新しい年を迎えた。