シャッターの向こう側。
「何だよ」

 睨まれて、咳ばらいする。

「いいえ。何も」

 ただ、たまには人間らしいんだな~と、思ったなんて言ったら、また叩かれそうだし。

「ともかく、飯なら二人で行けよ。俺は冴子に呼び出しくらったから」

 あ。

 やっぱり携帯の相手は冴子さんか。

 坂口さんが肩を竦めて、宇津木さんの押した。

「なら、冴ちゃんも呼べばいいだろ。たまには付き合え」

「何で俺が、そんなお邪魔虫みたいな事をしなきゃならないんだよ」

「いいじゃないか、ダブルデートみたいだろ?」

「やめろよ、気色悪い」

 お互いに言い争いながら、それでも私達は会社を後にし、繁華街にあるお洒落な居酒屋に落ち着いた。


 そりゃ無理矢理的に誘いましたけど、その不機嫌そうな顔はどうにかならないですかね。

 宇津木さんの表情をスッキリ無視して、坂口さんはメニューを広げる。

「冴ちゃんはビールかな?」

「冴子はなんでも飲むだろ」

 そうそう。

 冴子さんが来るんだよね。

 ちょっとどんな人か、わっくわく。

 何たって、この訳が解らない宇津木さんの彼女だもの!

 しかも見た感じ宇津木さんを振り回せる唯一の人だし!


 これはちゃんと目を見開いて見ないと!


「そのたくらんでいそうな顔は何だ?」


 ……あら。

 宇津木さんの冷たい視線に、表情を引き締める。

「そんな顔してません?」

「してただろうが」

「そんな事はないですよ」

「してた」

「してません!」

「まぁまぁ二人とも。皆ビールでいい?」

 坂口さんが割り込んでくれて、宇津木さんの視線が彼に移った。

「いや。俺は烏龍茶」

 ……烏龍茶?

「宇津木さん、車ですか?」

「いや。違う」

 首を振る宇津木さんに、坂口さんが小さく笑った。

「車も何も、宇津木は免許持ってないよ」

「ええ!? マジですか!?」

 このご時世に珍しい!

 免許証があれば、身分証明にもなるし楽チンなのに!

「なら、何で飲まないんですか?」

 素朴な疑問に、宇津木さんが視線を天井に向けた。


「それはね。隆平が実はお酒に弱いからなのよ」

 耳元でした涼しげな声に、ぎょっとして振り返る。
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