シャッターの向こう側。
 坂口さんは吹き出し、宇津木さんは視線を反らした。

 この人だな。

 私を妙に紹介したのは。


「ちょっと宇津木さん……」

「俺はそんな事は言ってないぞ?」

 素早く返って来た返事に、目を細めた。

 言ってなくても、それに近いことを言ったんでしょうよ。


「失礼な人ですね」

「お前にそれは言われたくはないな」

「まぁまぁ、お互い様じゃないか」


 って、コラ、坂口さん。

 普通は庇ってくれるでしょうが。

 思わず睨み付けると、冴子さんが軽やかな笑い声をあげた。

「漫才みたいになってるわよ、あなた達」

 その言葉に、宇津木さんが冴子さんを睨む。

「そこに俺を含めるな」

「含めないと漫才にならないじゃない。それで、もう注文はしたの?」

「あ。いえ。まだです」

「じゃ、頼んじゃいましょう? 神崎さんは何がお好き?」

 ……なんて言いながら、冴子さんは坂口さんからメニューを引ったくって私に見せてくれた。

「え。あの、なんでも……」

「あらダメよ~。この二人に任せておいたら、自分の好きなものしか頼まないんだから。特に隆平は」

 その言葉に吹き出した。

 た、確かに。


「じゃ、私は……このふわふわオムレツがいいです」

「OK。じゃ、私はこのミス・サラダね」

 そう言って、冴子さんはちらっと男性陣を見た。

「何か一品、選んでもいいわよ?」

 宇津木さんは無表情に、坂口さんは笑いながら首を振った。

「女性に任せるよ」

「あら。坂口ちゃん嬉しいこと言ってくれるじゃない」

 冴子さんはニッコリと微笑み、結局、お料理のほとんどを二人で決めた。


 ……何か。

 冴子さんも、我が道を行く人かな?

 そんな感じで運ばれて来たビール+烏龍茶で乾杯をし、当たり障りのないお天気の話から、何故か今のガソリン代の話になりつつ、楽しくお酒を飲ませてもらった。


 途中、宇津木さんが冴子さんに蹴られていたんだろう。

 たまにしかめられる顔が、妙に笑えた。


 絶対に真似は出来ないけど。
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