シャッターの向こう側。
 だけど、何かがおかしい様な気がする。

 付き合ってけっこう経つけど、他の同僚となんら変わりないような……。

 そりゃ、最初のうちは会えればイチャイチャもそれなりにしたけど、会わないなら会わないでそれで良かったり……

 それが、おかしい?

 でも、それが普通?

 ドキドキもトキメキも何もなく、淡々と一緒にいて、時にはキスをして、抱き合って?


 ビールジョッキを持ちながら、じっとテーブルを見る。


 何となく、このままじゃいけない気がする。

「坂口さん」

「うん?」

「私、写真を撮るのが好きです」

 顔を上げると、坂口さんは眉を上げて瞬きをしている。


「うん。知ってるけど……」


 本当に……?


「……神崎ちゃん。何が言いたいの?」

 顔をしかめている坂口さんに、きゅっと口を閉ざした。

 優しくしてもらいながら、私がいう事じゃないような……

 そんな気もする。

 それに、まだハッキリと何を言いたいのかすら、私自身が整理出来ていない。


 でも……


 日に日に、何かよく判らないわだかまりが蓄積されていく。

 優しいのに。

 優しくしてくれているのは解っているのに。

 〝優しい人〟それが私の理想でしょう?

 だけど……

 それですら、よく……判らない。

「ごめんなさい。用事を思い出しましたので帰ります」

 伝票を素早く持つと立ち上がり、びっくりした顔の坂口さんに腕を掴まれる。

「ちょっ!! 神崎ちゃん?」

「すみません。帰りま……」

「待ってよ、今の……どういう事?」

 低い声にハッとして顔を上げると、坂口さんの真剣な表情が見えた。

 どういう事と言われても、何を言いたいのか解らない。

 解らない事は言えない。


 だから……っ!!

「考えがまとまったらお話します。だから構わないで下さいっ!!」

 腕を振り切って会計を済ませると、急ぎ足で店を出た。
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