シャッターの向こう側。
*****



「あなたたちって、本当に見ていて飽きないわね~」

 昼下がりのオフィス街。

 秋の味覚祭の広告は引き受けなかったけど、秋色コスメの撮影に加納先輩に引っ張り出された。

「誰と誰の話ですか」

 ランチのオムハヤシを食べながら、ちらっと先輩の顔を見る。

 なんでそんなに楽しそうなんですか。

「貴女と宇津木くんよ。二人とも遠慮なく言い合う姿はすでに名物ね」

「見世物じゃありませんって。だいたい私はいい迷惑です」

 ポカスカたたかれまくって。

「あら、そんな事言わない。宇津木くんはアレで可愛がってるつもりなんだから」

 あれで?

 や。

 ある意味ではカワイガッテもらってますが。

「わっかりにくい男よね~」

「まったくもって」

「だけど、優しいでしょ?」

「……ぅぐっ!!」


 喉に……っ!!


 息が、い、息ができないっ!


「え。あ、あら。大丈夫?」

 あまり大丈夫じゃないです!!

 背中を摩ってもらいながら水を飲むと、クスクス笑いの先輩を眺めた。

 あ~死ぬかと思った……

 それにしても、先輩。

 アレで優しいなら、地獄の鬼も優しいんじゃ?


「やぁっぱりね。気付いてないと思ったわよ~」

「何がですか」

「神崎ちゃん。表面だけの優しさなんて、ホントの優しさじゃないのよ?」

 艶やかな笑顔の中に、真剣な視線を感じて思わず身を引く。


 先輩……

 何が言いたいんですか……?

「あの……」

「ま、とりあえず、食べ終わったら撮影に行きましょ。秋のルージュの新作、綺麗な色なのよ~?」

 バッサリ話題を変えられて、笑った。


 自分で考えろと言うことらしい。


 とにかく、悶々と考えながらも撮影に取り掛かり、どうにかOKをもらうと、会社には戻らずに直帰した。

 誰もいないマンションは、もちろん薄暗くて、入るなり電気をつける。

 そして目にしたのは、二つの段ボールと写真の抜かれたアルバム。
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