シャッターの向こう側。
「……野宿ですかねぇ」

 日も暮れて立ち往生。

 用意がいいのかなんなのか、ペンライトを片手に宇津木さんが空を振り仰いだ。

「俺はいいんだが」

「変な動物いませんよね?」

「普通の動物はいるだろう」

 それは蛇とか熊とか、怖い系ですか?

「ここら辺は自然保護地区だからな」

 それからちらっと私を見下ろす。

「月明かりが多少あるが、ライト消しておいてもいいか?」

 この鬱蒼とした樹木の中でですか?

「火を焚くわけにもいかないし。電池まで持ってきてないから、出来るだけ節電したいんだが」

「あ……」

 ですよね。

 何が起こるか解らないし。

 いざって時に使えません、じゃ意味がない。

「大丈夫です」

「怖くても、お経は勘弁な?」

 何故、お経!?

 微かな音がしてライトが消えると、青白い月の光だけが光源になる。


「あ。けっこう明るいですね」

「……まさかサバイバルになるとは思ってなかったがな」

 私もです。

「今は……20時か」

 圏外のままのスマホを見て、溜め息をついた。

「夏も終りですから、夜明けは5時くらいですかね~」

「や。4時半くらいには明るい」

「よく知ってますね……」

 バックを下ろして中を物色していると、宇津木さんが笑ったような気がした。

 スマホをしまっちゃったら、表情までは見えないんだな。

「朝陽も綺麗だぞ?」

「やですよ。そんな祖父ちゃんみたいな生活」

「お前は余程、俺の事を祖父さんにしたいんだな」

 低くなった声音に笑った。

「うちの祖父ちゃんの話ですから」

「ああ。成る程」

 構わずバックを掻き回す。

「何をしてるんだ?」

「確か、雨天用のビニールシートがあるはずなんですが」

「そんなものもあるんだな」

「このカメラ防水じゃないですからね。晴れの日ばかり撮っている訳でもないですから」

 やっと見つけて、シートを広げる。

「これで座る所は確保しましたよ」

 広げても、横になれるだけのスペースはないんだけど……どうにか二人くらいなら座れるでしょ。

「宇津木さんもどうぞ」

 微かに躊躇した雰囲気が伝わって来た。
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