シャッターの向こう側。
「いや……俺は」

「宇津木さんだって、ずっと歩きっぱなしなんですから。体力は温存しないと」

 明日だって、どれだけ歩くか解らないんだし。

 小さな溜め息が聞こえて、隣に宇津木さんが座った。

 そして、なんとなく沈黙が落ちる。

「…………」

 き、気まずい。

 非常に気まずいからっ!!

「……暇ですね~」

 こそっと呟くと、隣から小さな笑い声が聞こえてきた。

「笑い事じゃないんですが」

「そんな時に暇とか言ってる奴もいるし」

 ……ふっ。

 確かにね。

「だって、暗闇に近いですし、することもないんですもん」

「夜景でも撮れば?」

「うーん……」

「さすがに疲れたか」

「少し」

「チョコ食べるか?」

「はぁ!?」

 チョコ!?

 そんなものがあるんですかっ!?

「あー…あれだ、人生何が起こるか解らないものだし」

 はい?

「イキナリ人生語っちゃいますか?」

「こんなに色々とあると、俺も少しは考える……」

 も、もしかして……

「……それは大まかに、私のせいとか言いませんよね?」

「お前、自意識過剰」

 ですよね~?

「まぁ、でも、似たようなもんか」

「どっちだっ!?」

「どっちでもいい。今回のは俺のミスだ」


 パキンと小さな音がして、甘い香が微かに広がる。


「お前と組んだときは、かなり気をつけていたんだが」


 ひょいと板チョコを手渡された。


「ありがとうございます」

「ああ。気にするな」

 そう言って、また沈黙が落ちる。

「…………」


 なんか調子狂うなぁ……

 そういえば私と宇津木さんて、普通の会話らしい会話って、したことあったかな?

 なくはないよね。

 まぁだけど、いつも仕事の話か、もしくは思いきりどつかれているか……


 あ、いやいや。

 別にどつかれたい訳じゃないから、全然構わないんだけど。

 でも、ま。

 嫌な沈黙でもないし……

 チョコを口に入れた時、宇津木さんが口を開いた。
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