シャッターの向こう側。
「理詰めで計算高いより、思いつきの発想は貴重だと思うんだが」

 は、はい?

「なんですか、突然」

「いや。余計な一言とか言われたから、何となく説明してみてる」


 ……よくわからん。

「だいたい、こういうのは感性の問題だと思うんだが」

「全然、全く、言ってることの意味が、唐突過ぎますが?」

「……お前が一言余計だってむくれたんじゃないか」

 そんな憤慨した様に言われても。

「お前って、かなり忘れっぽいんだな」

「過去は振り返らないようにしたいと思います」

「……少しは振り返った方がいいと、俺は思うが」

「たまには考えます」


 考えない訳がない。

 何も考えていなかったら、私は今までの経験から何も学んで来てないって事になっちゃうし。

 だけど、それだけじゃいけないのも解っている。

 昔あった事も含め、今の私が在るわけだから、経験を活かす……という事も、ちょっとは考えなきゃいけない。

 もちろん、過去に固執していても無意味だけど。


 たまにあるんだよね。

 昔の方が上手く撮れてたり……

 同じモノを撮ろうとしても、同じにはならない不思議。

 撮った時の状況も、感情も、情景も……

 手に取る様に解るのに、何かが違う。

 うまくは説明出来ないけど……


「……うーん」

「何だ、突然」

 言われて、一人じゃ無かった事に気がついた。

「あ。いや……」

 なんと言うか……

 うーん。

「何だ?」

 動いた気配がして宇津木さんを見ると、木陰から差し込む月光に照らされて、ちょっとだけ困った顔が見えた。


 困られても……


 そんなつもりは毛頭なく。


 でも、まぁ……

 こういう事は相談してもいいのかな?

 宇津木さんはれっきとしたデザイナーだし。

 一応は先輩だし。

 賞なんかとっちゃうような人だし……
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