シャッターの向こう側。
「あ。ラッキーだわ。誰も乗ってない」

 ちょうど来たエレベーターに乗りながら、加納先輩が手を引いてくれる。

「でもアレね。神崎ちゃんはそこら辺、きちんと解ってるわよね」

「……へ?」

 綺麗な横顔を見つつ首を傾げた。

「荒木さんてああだから、後輩指導なんかは私たち先輩がやる形になるんだけど……神崎ちゃんて彼に怒らないもの」

「え? 結構怒りますよ」

「それは仕方ないわよね」

 だから先輩。

 さっきから言葉が矛盾してますが。

「でもね~。彼に指導された子って、辞めるかキレるか、どちらかだったのよね」

 あ~……

 だってムカつきますもんね☆

「彼の言い方も悪いけど、未だにグラフィックスの若い子は敵視してるものね」

「敵視とは穏やかじゃないですね」

「逆ギレよ逆ギレ。下手に自分に自信満々で、人の意見も聞かない子の指導はこっちも願下げなんだけどね」

「言いますね~。先輩」

「少しくらいは言わせなさいよ。やりにくいったらないんだから」

 溜め息混じりの呟きに笑っていたら、次の階で人が乗って来て沈黙が落ちた。


 逆ギレか。

 私も一度は爆発したんだけどな。

 や。

 二度くらいしたかも?

 何度かしてる?

 でも印象に深いのは二度。

 一回目はフィルムケースを投げつけて、二度目はポカスカ私が叩いた。

 一回目はヒットして、二度目のは避けられたけど。

 エレベーターを降りて社員入口に歩きだし、加納先輩の隣を歩きながら苦笑する。


 ……私って確かに子供っぽいな。

 あれが欲しい、これは嫌だと地団駄を踏む子供みたい。

 言葉にするには幼くて、感情を押さえ込む程に大人でもない。

 だけどプライドがない訳でもないから、これまた厄介かもしれない。

 そう思うと、宇津木さんて相当我慢強いんじゃないだろうか?

 なんのかんのと言いながら、黙って見ていてくれる所もあるし……


「あ……」

 加納先輩の呟きに、ふと顔を上げて立ち止まる。


「ちょっと……いいかな?」


 笑みを浮かべた坂口さん。

 その姿に一瞬だけ躊躇して、頷いた。
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