シャッターの向こう側。
だけど、私はそうは思えない。

「……坂口さんの事は嫌いじゃないです」

 でも、好きな訳でもない。

「嫌いじゃないのに、何故、俺と別れたいの?」

「それは……」

「恋人としては失格?」

 いい人だと思います。

 思いますけど……

「他に好きな奴でも出来たわけ?」

 他に……?

「それは……」

「ハッキリ言えよ!」


 怒鳴られて、息を飲んだ。


「坂口さ……」

「俺じゃ嫌なんだって! だから俺とは付き合えないんだって!!」


 もの凄い剣幕で……


 やだ……っ

 怖い。

 思わず怯んだ瞬間、腕を掴まれて揺さぶられる。

「優しくしてやったじゃないか! 君だって喜んでたじゃないかっ!!」

「痛……っ。離してくだ……!」

「何が気に入らなかったんだよ! ふざけるなよ!!」

「いや。ふざけてないと思うよ?」

 急に低い声が割り込んで、ぱっと振り返った。


「こんばんは」

 にこやかに、とても不穏な雰囲気を醸し出している有野さん。

 腕を組み、ちらっと坂口さんを見た。

「女の子を本気で怖がらせてどうするんだよ。お前は」

「え……あ」


 パッと手を離してくれて、一歩離れた。

 ……痛かった。

「…………」

 何より怖かった。

「有野さんには関係……」

「残念ながら、それを言う資格はお前にはない」

 坂口さんの言葉を有野さんはキッパリと否定し切った。

「それに…彼女は俺の未来の嫁さんの友人だし? あながち無関心でもいられないんだよね」

 有野さんはツカツカと近づいて来て、ふんわりと微笑んでくれる。

「……本当なら、見て見ぬフリなんだけどね。どう見ても力づくってのは頂けないから。一言だけ助け舟を出すね?」

 そう言って、静かな視線で坂口さんを見据えた。

「……いい加減、ガキくさい嫉妬に他人を巻き込むんじゃない」

「…………」

 坂口さんは黙り込み、有野さんは肩を竦める。

「じゃ、またね」

 ヒラヒラ手を振って、有野さんはゆっくりと通り過ぎて行った。


 ……なかなかカッコイイ。
< 221 / 387 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop