シャッターの向こう側。
「うまいか?」

「…………」

 ……どうだ! とでも言いたそうな宇津木さんが、ちょっとだけカンに障るけど。

「はい」

 美味しいものに罪はない。

 呟いたら、眩しいくらいの笑顔が返ってきた。

「だろ? 結構オススメなんだ。ここら辺はパスタの専門店は多いけど、他は健康思考が主でさ。なかなか……」

 宇津木さんは、私の様子に気付いて咳払いした。

「そんなに驚くな」


 ……驚きますって。

 だって、こんなに嬉しそうに何かを語ってる宇津木さんて、かなり稀じゃない?

 初めて見た気がする。

 宇津木さんて、いつも仏頂面でさ。

 笑顔もニヤリ笑顔がほとんどだし。

 たまに微笑んでるけど、こんなに晴れやかに笑ったのなんて……

「……何をニヤついてるんだ」

 睨まれて、今度はこっちが咳払いした。

「いいえ。なんでもないです」

「……深く考えないことにする」

 ブツブツ言ってる宇津木さんに、思わず吹き出す。

「笑うんじゃねぇ」

 そう言って、視線をそらした。


 きゃー。

 ちょっと何、照れてるの?

 ヤダヤダ、案外、可愛いとこあるんじゃないのさ。

 いっが~い!

 ニマニマしていたら、メニュー表で叩かれた。


「暴力反対!」

「……叩きやすい頭のお前が悪い」

「人のせいにしないで下さい」

「言葉が通じるなら、話す」

 それはどぉいう意味だ!

「お前は、自己流の聞き方をするから、迂闊にモノも言えん」

「言いたい放題ですね」

「間違いなくお前もそうだろ」

「最初は遠慮してましたとも」

 だって、賞なんて取っちゃうデザイナーなんて、そんなにゴロゴロいる訳じゃないもん。

「いいや」

 宇津木さんはお冷やを飲み、ぐっと持っていたフォークを向けて来た。
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