シャッターの向こう側。
「お前は初対面から失礼な奴だった」

「何を根拠に! 私が隣の席になった時、きちんと挨拶したのを鼻で笑ったのはどこの誰ですか」

「ばぁか。お前は何年前からうちで働いてんだよ」

 ん?

 2年前?

「……だって、まともに話したのなんて、あれが初めてじゃないですか」

 宇津木さんは目を細めると、口元に呆れた様な笑みを浮かべた。

「お前の脳細胞に期待した俺が馬鹿なんだろう」

「何がですか、ちょっと失礼過ぎますよ」

「俺がお前の写真使わせて貰えるかって頼んだ時に、お前は何て言ったか覚えてないのか」

「…………」

 ん?

 あれ?

 宇津木さんと組んだのって、あの出張が初めてじゃなかった?

「ちなみに。お前は、面倒だから勝手に使えばいいって言ったんだぞ?」

「………?」

「なので、使わなかった」

 ……全然、解りませんが。

 てか私、誰かに自分の写真、手渡した事を忘れてる?

 いや、そこまで惚けてない。

 私が撮った写真ならなおさら。

「履歴書と一緒に持って来た、入社資料用の写真があったろうが」

「ああ。海と雲を撮ったヤツですね。最近整理してネガ見つけましたよ」

 あれ見て、昔の写真が上手く撮れてるなって思ったんだよね。

 海が綺麗なエメラルドグリーンに近い青で、空がこれまた綺麗なスカイブルーで。

 ぽっかりと入道雲が浮かんで……

 凪に近い、穏やかな波と砂浜のコントラストがこれまた絶品……

 って。

「何年前の話ですか」

「だから。お前が新入社員の当時の話になるだろうが」

 フォークを下げ、またスパゲティーを食べながら、宇津木さんはもぐもぐ呟いた。


 え~……。

「まったく覚えてないです☆」

「カワイイふりして言っても今更だな」


 ごもっとも。
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