シャッターの向こう側。
「とにかく新入社員のペーペーのクセに、随分とぞんざいな口をきく奴が入って来たな……と、感心した」

 いや、それ感心したとかしないとか……

 そんな問題じゃない気がするよ~?


 ……宇津木さんて、変だ。


「ま。勝手に使っても良かったんだが。そうなると、俺の方にも不都合だったし……なんせ仕事とは関係ない事だったから」

 ん?

「仕事とは関係ない?」

「丁度その頃、地球環境をPRするポスターのコンペでがあってな。それの……」

「入賞したヤツだ!」

 宇津木さんがぎょっとして身を引いた。

「あれですよね、青と白の! 海と雲!」

 それはそれは綺麗な……

「……って、何で使ってくれなかったんですか~」

「あんなぞんざいに言われて誰が使うか。だいたいお前の写真使ったら共同作品になるから、色々と手続きが必要になるし」

 溜め息をつきつつ、宇津木さんは姿勢を正すと小首を傾げた。

「そんな面倒な事……あんな事を言われて誰がやるか」

 フッ……

 それもそうだ。


「若気の至りで許して下さいよ。入社当時なんて、まわりに合わせるので精一杯だったんですから」

「そこも馬鹿だな」

「何がですか」

「この業界ってのは個性がモノを言うと思うぞ? 何で周囲に合わせなきゃならないんだ」

 気がつけば、宇津木さんはスパゲティーを食べ終わって頬杖をついている。

「お前はどんな鋳型があってもはまらないよ。プライドと度胸は人一倍だしな」

「…………」

 それって、褒め言葉なのかな?

「それで、相談の件だがな」

「は、はい」

 ……宇津木さんも人の事を言えないくらい唐突だ。

「もう一つ。手段がある」

 手段?

「とりあえず、食い終われ」

「あ、はい」

 急いで食べ終わると食後のコーヒーがついてきて、それを一口飲んで落ち着く。

「じゃ、見てみるだけ見てみれば?」

 宇津木さんは持って来ていたブリーフケースから何やら大きな封筒を出した。
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