シャッターの向こう側。
「なんですか。これ」

「フリーランス用の個人契約書」

 受け取らされて、キョトンとする。

「ふ……ふりぃらんす?」

「ああ。うちの会社は、外注もしてるのは知ってるだろう?」

「なんとなく」

 撮影所は会社内にないし、フードコーディネーターさんやスタイリストさんやメイクさんなんかも外の人に頼む。

 有名所から無名さんまで、時に応じて会社が契約したりするけど……

「……何故、私に」

 呟いたら、宇津木さんの鋭い視線が返って来た。

「うちの会社の基本はフォトグラファーも常勤だが、それ以外にもフリー契約のフォトグラファーが数人いる」

「あ、そうなんですか……」

「お前って、本当に組織編成には興味ない人間だな」

 呆れた声に首を傾げた。

「はぁ……」

「ちなみに、この契約書は結構特殊でな。一応はうちの会社に帰属する事になる」

「はぁ……」

「真面目に聞け」

「いたっ!!」

 デコピンされて額を押さえた。

 容赦ない~。

「真面目に聞いてますよ~」

 ただ、返事が妙になってるのは認める。

 疑わしげな視線に愛想笑いを返して、封筒から書類を出した。

「あ。基本給があるんですね」

「そういう仕組みになる。今の常勤程の給料はないがバイト程度の基本給料は出る。その他に、その契約者のデザイン、写真を使った場合はその分も上乗せだな」

「へぇ」

「その代わりに常に会社に出社しなくてもいい……って利点もある」

「……ほう」

「ちなみに、今、逆の事をお前は軽くしている」

「はい?」

 逆の事?

「つまり、荒城 雄一郎氏と組んでの雑誌の仕事だな。ギャランティがあるだろう?」

「あ。はい。雑誌社の方から」

「向こうは給料って形じゃないだろうが、それと似たようなもんかな? プラスされるのが、この基本給与」

 ふぅん……?

 ……と、視線を書類に落として、細かくビッシリ敷き詰められた文字を追う。

「でもこのシステムって……うちの会社にとって、なんの利点があるんですか?」

 常勤しなくていい。

 給料は払う。

 意味がないような……

 てか、もったいない気がする。
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