シャッターの向こう側。
「じゃ、とりあえずビール2つと、烏龍茶2つ」

 にこやか~な今野兄と、メニューに真剣な加納先輩。

 そして隣に不機嫌面の宇津木さん。

「何故、俺が奢る事になったんだ?」

 うーん。

 その前に……


 何故、焼鳥屋さんに私はいるんだろう?

 気がつけば終業間近に今野兄がにこやかに近づいてきて、何故か加納先輩も顔を出し……


 そして二人に引っ張られてきた。


「いいじゃないですか。たまには」

「この間も奢ったが」

「そこはそれ、これはこれで」

「お前のそういう調子のいいとこ、俺は嫌いだ」

「男に好かれてもねぇ」

 ガン! と、足元で音がしたから、多分宇津木さんが今野兄を蹴ったらしい。

 ご愁傷様です。


「神崎ちゃん。何にする~?」

 我関せずを貫くつもりか、加納先輩がメニュー片手に顔を上げた。

「え。いや……帰ろっかな~? なんてのは……」

「その選択肢はないわよ?」


 ……ないですか。


「いい。ピヨ。気にしないで食え。こうなったら一蓮托生だ」

「それ、使い方間違ってますから」


 ツッコミにデコピンが返ってきた。


「……っ!!」


 む、むかつく!!

 こうなったらジャンジャン頼んじゃうからね!


「牛トロと鳥精とししとうがいいです!」

「茄子焼きもあるわ」

「じゃ、それと豚精としめじにポンポチとか」

「お新香とつくねもね」

「あ。それなら卵黄軟骨つくねにしましょう!」


 もちろん。


 宇津木さんは呆れた顔をしていた。




 そして……


「ごちそうさまでした~」

 にこやかな車内とはうらはらな、仏頂面の宇津木さん。

 焼鳥屋さんのくせに、かなりの高額な支払いを済ませてくれたのも宇津木さん。

 人がいいのか悪いのか……

 不機嫌オーラを感じてか、今野兄は1番遠いはずの宇津木さんを1番に送り届けたりして……


 ちゃっかり火の手を免れている。
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