シャッターの向こう側。
「今度は事前に言え」

 低い声は不機嫌な証拠。

 マンションの前で車のドアを開け、宇津木さんは肩を竦めた。

 いなくなった空間がポッカリと開く。

「じゃあな。明日、寝坊するなよ?」

 目が合って、首を傾げた。


 ……それは私に言ってる?


「大丈夫ですって。これくらい酔ったって平気れす」

「…………」


 まぁ、確かに呂律はおかしいけどね。

 宇津木さんは首を振ってドアを閉めた。

 その姿が後方に消えた頃、

「今野さんは、宇津木さんが平気なんですねぇ」

 車を走らせながらの今野兄に呟くと、難しい顔をされた。

「神崎さん程じゃないと思う」

「えー? 私はちゃんと聞いてから奢って貰いますよ」

「……いや。その時点で同類じゃない?」

 助手席の加納先輩がクスクス笑い、

「宇津木くん、神崎ちゃんには甘いと思うわよぅ?」

 と、意味不明な事を言った。

 どこが。

「……でも、神崎ちゃんも、宇津木くんには素直よね」

「私は悟ったんです。遠慮してたら、どんどん宇津木さんのペースになっちゃうじゃないですか」

「あら。私とは違うじゃない」


 ん?

 首を傾げていると、今野兄が小さく笑うのが聞こえた。

「そうなんだ?」

 何が?

「そぅよぉ。私にはこの写真をどうですかとか聞くのに、宇津木くんには何も言わずに渡して、それから抜粋するでしょ」

「信用度の違いでしょう」

 サラっと今野兄は呟いて、加納先輩はムッと口を閉ざした。


 や……


「そんなに人によって、やり方変えてるって訳じゃないです。ただ……」

 宇津木さんの場合は、全部の写真を見せて、それで使うモノ使わないモノ保留するモノ……と、分けて行くのが最初からだったから。

 それに慣れていると言うか、主流になったと言うか……


 画像の処理をするのは皆一緒で、処理をしてから渡してもいたけど。

 最近は確かに、渡してから選んでるとは思う。


 ……でも、

 それが出来るのは、宇津木さんと私が選ぶ写真が一緒だからだと思う。
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