シャッターの向こう側。
「今日と明日は出勤らしい。有野さんに引っ張り出されたみたいだ」

「いいんじゃないですか? あの二人は幸せだし」

 仕事だって、二人でいれる分いいかも。


 だけど……

 ガバッと勢いよく宇津木さんが振り返った。


「……有野さんと加倉井さん?」


 ん?

「聞いてませんか? クリスマスの時、佐和子の手に指輪がありましたよ?」

「うわ……全然気付かなかった」

「珍しい~」

 宇津木さんて、何でも知ってると思ってた。

 こんな事もあるんだ。


「……何だよ」


「なんでもありませんよ?」


 と、惚けてみると、宇津木さんは眉をしかめてまた歩きだす。

「ますます解りにくくなった」


 どういう意味!?


「何がですか」

「何が……って、お前が」

 私?


「あの……私の方がますます解りません」

「……何でもない。聞き流せ」

 いやぁ~、そいつぁ無理ってもんですよダンナ。

 一度でも耳にすれば、気になるってのが人情ってものだよ。

 私は間違ってないと思うぞ~?


「何ですか? 何がですか? どこですか? どこらへんがですか?」

 背後に付き纏って右往左往すると、宇津木さんは溜め息をつきつつ首を振った。


「……ピヨ」

「はい」

「お前が遅いからギリギリだ」


 ……何が?


「とりあえず、空席があったのは19時半のやつなんだ」

「……はい」

「そして空港からここまで、1時間40分はかかっている」

「は、はい」

「ちなみに、次の直行バスは16時50分だ」


 ひぃ!


「無駄足踏ませないでくれ」

「はい!」


 それはもう、真剣に歩いた。


 そのおかげかどうかは解らないけど……

 バスはやたらにスムーズに空港に着き、ちょっとお土産ものを見る余力を残しながら、きちんと時間通りに座席に座る事が出来た。


「宇津木さんて、タイムキーパー」

「お前が適当過ぎ」

 ……ちらっとムッとした。
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